2021/01/19 06:47

刺繍入りのランドセルをお預かりしています。今回は刺繍の部分を財布に生まれ変わらせました。

 

事前にお子様が小学生時代に興味のあった事などをお聞きしており、そのなかからデザインに活かせそうなものをチョイス。馬、フクロウというワードがありましたので、まず、背側にインレイ技法で馬蹄を表現いたしました。インレイ技法はまず表生地をくりぬき、別生地をはめ込む構造です。

 

ここではミシンを使用します。小さい面積を縫うため、ステッチのピッチも細かくし、繊細な作業を一発勝負でするため緊張感がございます。アクセントでゴールドカラーの小カシメを使い高級感もございます。

 

ボディの縫い合わせに関しては手縫いしております。ミスなく確実に縫い合わせるためです。

手縫いとミシン縫いは、糸は針も全く違うもので、ステッチの構造も違います。なんといっても手縫いはまず、菱目打ちという道具で針穴をあけていく必要があり、時間はかかります。工賃はミシンと比べて高くなりますが、お預かりしている素材は限られており、確実に製作するには必要であると考えております。

 

財布の正面にはお子様のファーストネームの頭文字と入学、卒業した年を刻印しております。また、内装部分には小1の身長と小6の身長を箔押ししております。

 

この作品の最も力をいれたところはあまり目立たない蛇腹部分です。お子様はフクロウに興味をもたれていたとのことで、電気ペンでイラストを描くことにいたしました。蛇腹の部分なので、谷折りする必要があり、モチーフを縫い付けたら分厚くなり、折れなくなるのです。

 

この蛇腹部分はフクロウと相性が良かったです。フクロウは警戒すると体を細く収縮させる習性があります。その中でも最も細くなるアフリカオオコノハズクをイメージしました。財布を閉じる際、イラストが細く見えるのでその習性をうまく表現できたと思います。

 

簡単な文章でまとめましたが、かなりの熱量をつぎ込んだ作品となりました。ご満足いただけることを願っております(笑)