2020/12/18 22:17

TUDAのアイコンともなるミニバッグです。

一目みて、『シンプル』という言葉が思い浮かぶと思います。

このシンプルという言葉ですが、作り手側は決して直訳してはいけないと考えております。

 

直訳は「簡素な」「単純な」等・・・悪い意味では「地味な」というものもございます。

“Simple is best.”という言い回しを良く耳にします。この言葉は単に簡素なものが良いという意味ではなく、「これ以上削るところがない状態」を表しております。

 

削った結果、本当に大切で必要なものだけが残る・・・という事です。

 

あれこれ付け加えてしまったら素材の良さを消してしまいます。私の仕事においても素材をどう使うかという事が一番難しくもあり、面白い点でもあります。

 

高級レストランで、素材本来の味を楽しんでいただくため、「お客様、こちらのお肉は岩塩でお召し上がりください」とあえて説明するのにも同じような理由があります。

 

デザインというものを根本から見つめなおし、この形が生まれました。製品を作る際どうしても絵型を描くことから作業が始まりがちですが、まず素材と対話するようにじっくり見て、触って、イメージして・・・気が付けば絵型なしで型紙をおこしておりました。

 

この商品を作ってみようと思ったきっかけは、他業界である建築デザイナーや材木屋さんが集まるようなイベントに顔を出させていただいたときです。

 

『もっと素材をしっかりみてからデザインしようよ』という建材屋さんと材木屋さんのお話が横から聞こえてきたので、気になって耳をすませていました。

材木屋さんがおっしゃるには、「デザインする側は木材の質量をしっかり理解しているのか・・・質量に対しておかしなデザインが多くなってきている」とか・・・

 

これはバッグ作りにも落とし込める内容だと思いました・・・

 

そのお話にかなり影響を受け、TUDAは『すっぴん』を表現できるバッグを作ってみました。革の自然美を表現することを強く意識したのです。

 

この手提げバッグに機能性を求めてポケットをつけてしまえば、全体の良さが崩れるのでつけておりません。

モノづくりに“Simple is best.”の考えを正しい意味で応用しているからです。

 

今回製作画像も少しご紹介いたします。



 裁断をしたあと、床面(革の裏面)の毛羽立ちをしっかり抑えるため、目止め液を塗り、つるつるになるまでこすります。


 背面用の革にゴールドの箔押しをいたします。革タグを本体に縫い付けず、本体の床面に直に箔押しすることにも意味をもたせております。もし箔がずれてしまえば、革を無駄にしてしまいます。この緊張感も大切なのです。


 

持ち手は常にお客様が握られる部分です。一番握りやすい幅はどれくらいなのか試行錯誤を重ねました。


 持ち手縫い付け部分のデザインステッチはもっとも集中力を使う部分です。ステッチが重なる部分はすべて同じ穴を踏まないとやり直しですが、ノーミスで縫います。


 マチを張り付けるときはしっかり頂点、センターをずらさずに張ります。ここが1ミリでもずれると全体に響くこともございます。この作業は手を抜くと今までの工程がすべて台無しになります。最終縫い合わせをする前にしっかりチェックをいれます。

 


糸処理をし、コバもきれいに整えて完成となります。

 素材は高級革栃木レザー(ソフトなタイプ)でカラーはナチュラルのみ。

経年変化で徐々に飴色に変化していきます。


Simple”に“Authentic”がプラスされた『作品』となっております。

是非TUDAの世界観を感じていただければと思います。